ムートン加工に出していたお兄ちゃんたちが、5ヵ月ぶりに帰ってきた。
送られる前に、「良いムートンに仕上がりましたよ」と電話で工場の人が知らせてくれた。
言われたとおり、色はきれいなミルキーホワイトで、サラサラした手触りも良い感じ。
お兄ちゃんたち、案外、弾力のある毛だったんだね。
塩漬けして送り出した時に比べると、もともとの長い毛はだいぶ短く刈りこまれていた。
毛先はどうせ変色しているし、毛足が長過ぎると寝てしまうから、たぶんこの方が使いやすいのだろう。
思わず、その中に顔をうずめたら、ちょっとミルクっぽい匂いがした。
意外にも革特有の匂いではなくて、もちろんマトンのようでもなく、やっぱり子ども羊のニオイ。
わが家の羊で作った、初めてのムートン。
ムートンは、温かくておしゃれなインテリアとしてだけじゃなく、その弾力性と通気性で介護用品になるほどのすぐれものだ。
家族の誰が使うにしても、あればなにかと重宝するにちがいない。
そうだ。
記念すべき一枚は、最近めでたいことのあった幼なじみFちゃんに贈ることにしよう。
自家用のもう一枚は、やっぱりソファに置くのがキマリでしょ。
でも待てよ、猫の好きそうなこの感触。
すぐに猫の黒い毛まみれになるのもイヤだな。
などと迷っていたら、「それなら今度は黒い子どもをとって、ムートン作ろう」という意見が出た。
この秋に種付けしたとして、来年の春に子どもが産まれて、さらに10ヵ月肥育して・・・・・・。
うーん、黒いムートンまでは長いみちのりだ。
「あいつら、帰ってきたらしいよ。だいぶ雰囲気が変わったって」
「フーン。しばらく会わなかったからね」